光学振動計測とは
住宅や事業所への電力供給を支える電柱は2019年現在、国内に約2,200万本※設置されています。送配電事業者は各電柱の状態に応じて補強・更新を行っていますが、設備老朽化や保安作業に携わる人員の減少、自然災害の頻発化・激甚化に備えて、電柱の状態把握の更なる効率化が求められています。現在の巡視点検では主に電柱のひび割れや傾きなど表面状態が目視で確認されている一方、内部の鉄筋腐食、基礎や地盤の状態変化、変圧器など柱上設備の取り付け状態(固定部の緩み)など、表面からは観測が難しい強度低下を把握する取り組みは途上にあります。こうした強度低下は、一般に外力に対する応答特性(変位・振動)に現れるとされますが、これを計測するには多数のセンサを各電柱に設置する必要があり、約2,200万本もの既設電柱への適用は難しいのが現状です。
当所では、カメラによって電柱各部の変位・振動を低コストかつ効率的に計測・可視化する技術を開発し、強度評価に役立てるための研究を進めています。光学ビデオカメラで電柱や橋梁などの対象物を動画撮影することによりセンサの敷設が不要で、遠隔・非接触での振動計測を実現できます。構造物・設備等の振動状態が、運用停止しないで把握することが可能になります。
※これに加えて、通信会社所有の電柱も配電に利用されています。