横須賀地区 光学振動計測
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研究内容のご紹介

光学振動計測

画像処理による振動の計測可視化で電柱などの構造強度把握に向けた取り組み

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光学振動計測とは

住宅や事業所への電力供給を支える電柱は2019年現在、国内に約2,200万本※設置されています。送配電事業者は各電柱の状態に応じて補強・更新を行っていますが、設備老朽化や保安作業に携わる人員の減少、自然災害の頻発化・激甚化に備えて、電柱の状態把握の更なる効率化が求められています。現在の巡視点検では主に電柱のひび割れや傾きなど表面状態が目視で確認されている一方、内部の鉄筋腐食、基礎や地盤の状態変化、変圧器など柱上設備の取り付け状態(固定部の緩み)など、表面からは観測が難しい強度低下を把握する取り組みは途上にあります。こうした強度低下は、一般に外力に対する応答特性(変位・振動)に現れるとされますが、これを計測するには多数のセンサを各電柱に設置する必要があり、約2,200万本もの既設電柱への適用は難しいのが現状です。

当所では、カメラによって電柱各部の変位・振動を低コストかつ効率的に計測・可視化する技術を開発し、強度評価に役立てるための研究を進めています。光学ビデオカメラで電柱や橋梁などの対象物を動画撮影することによりセンサの敷設が不要で、遠隔・非接触での振動計測を実現できます。構造物・設備等の振動状態が、運用停止しないで把握することが可能になります。

※これに加えて、通信会社所有の電柱も配電に利用されています。

光学振動計測の仕組み

画像処理することで構造物の揺れを可視化

カメラで撮影した動画を使い、電柱などの被写体の振動を計測し強調表示する手法を開発しました。時系列変位を周波数変換し、特定の周波数を抽出する処理を加えることで、周波数ごとの挙動を分解して可視化することが可能になります。

1.1Hz、1.5Hz、8.8Hzの各周波数について、各振動を1,000倍に強調した映像を生成しました(図4)。この結果、1.1Hzでは水平方向、1.5Hzでは垂直方向に柱体がしなる様子を確認できました。これは典型的な電柱が水平方向と垂直方向とで異なる固有振動数を持つという既往研究※の報告結果と整合しています。また、8.8Hzでは変圧器が回転方向に揺れ、柱体とは異なる動きをしていることが確認できました。これらの結果から、動画から電柱の各部材の振動を可視化する基礎検証ができたと考えています。将来的には巡視点検時に撮影した動画から振動状態を割り出し、構造強度の簡易評価の材料とすることが期待できます。

※高畠大輔, 金澤健司, 朱牟田善治. 配電柱上設備の性能照査型耐震性能評価法, 日本地震工学会論文集第20 巻,第1号(特集号). 2020, 226-244.藤江幸人, 井ロ重信, 松田芳範, 小林薫.新幹線走行に伴うPRC単純桁の振動について. コンクリート工学年次論文集, 30, 3, 2008.

各周波数の各振動を1,000倍に強調して可視化した例1

各周波数の各振動を1,000倍に強調して可視化した例2

各周波数の各振動を1,000倍に強調して可視化した例3

構造強度把握に向けてデータ収集と多面的な知見の統合を加速

電柱の振動挙動は、少サンプルの振動試験やシミュレーションなどでは先行研究例があるものの、既設電柱に対しては合理的なコストで計測する手段がこれまで無かったため、データが十分に蓄積されていません。本技術を用いれば実地のデータを低コストで数多く蓄積することが可能になります。大量の実地データが集まれば、破壊・振動試験やシミュレーションによる強度分析結果と照らし合わせることで、従来知見との相互検証やモデルの深化・精緻化が期待できます。
当所では、こうした研究や活動を通じて電柱の構造強度をより簡便に把握・評価するための仕組みづくりに取り組んでいきます。

 

研究内容を詳しく知りたい方は、こちらよりお問い合わせください。

多数の既設電柱から振動状態のデータを取得し負荷試験やシミュレーションの知見と統合

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