横須賀地区 火力発電 のCO2排出低減 に向けた石炭・アンモニア混焼技術の開発
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研究内容のご紹介

火力発電 のCO2排出低減 に向けた石炭・アンモニア混焼技術の開発

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【カーボンニュートラルと火力発電】

2022年現在、日本国内の二酸化炭素(CO2)総排出量の約4割は発電に由来しており、そのほとんどが火力発電所からの排出となっています。そのため、政府が目標としている2050年カーボンニュートラル※1に向けて、発電からのCO2排出量を削減する、即ち、発電の脱炭素化が重要な課題となっています。

 

発電の脱炭素化のひとつとして、再生可能エネルギー(太陽光、風力等)による発電の導入が挙げられます。しかし、特に太陽光・風力による発電は人々の生活に合わせた調整が難しく、文字通り「お天気任せ」になってしまいます。

このため、人々が自由に電気を使うためには自由に発電量を調整できる能力である「調整力」が重要となります。

現在の日本ではこの調整力は主に火力発電が担っていますので、安定的な電力供給とCO2排出削減の両立のためには、火力発電の脱炭素化が避けて通れない重要な課題となります。

 

※1:2050年カーボンニュートラル:

2050年までにCO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質的にゼロ(=カーボンニュートラル)にすること。CO2を排出した場合は同じ量だけ植林等で吸収しなければ達成できない。

 

「火力発電」・「石炭火力発電」について詳しく知りたい方は、以下の動画をご覧ください。

電中研チャンネル #1-1 石炭火力発電の仕組み(※音が出ますので、ご注意ください。)

【燃やしても二酸化炭素が出ないアンモニア】

火力発電の脱炭素化として、燃焼時にCO2が発生しない炭素原子を含まない燃料の利用が挙げられます。

 

炭素原子を含まない燃料の代表として有名なものに、水素(H2)があります。しかし、水素を大気圧で液化するために-253℃まで冷却する必要があること、体積あたりのエネルギーが小さいことから、発電に必要な大量の水素を貯蔵・輸送することは困難を伴います。

そこで、電力中央研究所では、水素と同様にCO2を排出しない燃料として、アンモニア(NH3)の火力発電所での利用を研究しています。アンモニアは大気圧で-33℃で液化し、すでに工業用途に多く利用されているため、貯蔵・輸送が比較的容易に行えます。

このため、今後の火力発電用の燃料としての利用が期待されています。

 

しかし、アンモニアの利用にも課題があります。

大きく分けて、

①燃焼時にアンモニア中の窒素原子が酸素と反応して大気汚染物質となる窒素酸化物(NOx)の発生が懸念されること

②現在使われている気体燃料と比較して燃焼しにくいことです。

 

【アンモニアを石炭火力発電所で使う】

アンモニア専焼(燃料をアンモニア100%とした状態)であれば、CO2を排出しない火力発電を実現できますが、いきなりアンモニア専用の火力発電所を設計・建設するのは、非常に大きな費用がかかります。そのため、まずは既にある石炭火力発電所にアンモニアを混ぜて使用することで、石炭の使用量を減らしてCO2を削減することを目指しています。

 

石炭火力発電所でアンモニアを使用する一番の理由は、石炭とアンモニアの燃料としての課題の多くが共通しており、石炭では既にその対策が確立しているためです。石炭もアンモニアと同様に、

①燃焼時に石炭に含まれる窒素原子が酸素と反応し大気汚染物質となるNOxが発生しやすい燃料ですが、石炭火力発電所でNOxを低減する技術が確立しており、

②比較的燃焼しにくい燃料である石炭を燃焼させるノウハウは数多くあります。

 

これらを踏まえて、電力中央研究所はアンモニアを石炭に混ぜて燃焼させる試験を実施しました。

この結果、電力中央研究所の開発した燃焼方式を用いることで、20%アンモニア混焼時(燃料をアンモニア20%、石炭80%とした状態)でも石炭専焼(燃料を石炭100%とした状態)と同等のNOxで石炭専焼時と比較して「CO2排出量20%削減」ができることを確認しました。

 

これまでの経緯はこちらの動画でも詳しく紹介しています。

電中研チャンネル #1-2 アンモニア混焼火力発電の研究(※音が出ますので、ご注意ください。)

【今後の展望】

共同研究先の株式会社IHIは、株式会社JERAと共同で、現在運転中の火力発電所でもアンモニア20%混焼が可能であることを実証研究で確認中です。

 

電力中央研究所では、電源開発株式会社、中外炉工業株式会社、国立大学法人大阪大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で、アンモニアの混焼率を向上させ、アンモニア専焼に向けた研究を開始しています。

アンモニアの混焼率を向上させることで、CO2の排出量はさらに削減することができますが、よりNOxが発生しやすく、また燃焼も困難になっていきます。これらのデメリットをいかに抑えながら、アンモニアの燃料利用を拡大するかが重要なキーワードとなります。

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木本 政義

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特別嘱託
博士(工学)

泰中 一樹

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主任研究員
博士(工学)

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