1.リスクコミュニケーションとは
「リスクコミュニケーション」という言葉は1970年代半ばに米国で誕生しました。定義はいくつかありますが、米国研究評議会(NRC; National Research Council)では「個人、集団、組織間における情報と意見の相互的な交換プロセス」(1989年)と定義されています。リスクコミュニケーションの目的は、必ずしも意見の一致や合意形成というわけではなく、関わった人々が十分に情報と意見を交換し、相互理解と納得感を高めることであり、結果として信頼関係の向上や改善が期待されます。リスクコミュニケーションが失敗すれば、関係者間の信頼低下により事業の中止・遅延をまねく可能性が高まります。このため、まずは事業者が住民の不安や懸念にしっかり耳を傾けて地域状況を理解し、それに応じたリスク評価とリスク管理、情報共有といった日常のコミュニケーションを継続・改善することが重要です。
リスクコミュニケーションは、事業者にとっては効果が見えにくいために継続が難しい場合もあります。しかし、多様な利害関係者と相互理解を深めながら信頼関係を築くには、関係者間において、①対象リスクに対する科学的な理解と情報共有、②継続的な意見交換、が必要とされます。